雷電のチチ日記

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「世継ぎ問題とY染色体」は終わった話

伝統に科学の衣を無理矢理着せようとしてトンデモになってしまった例かな。だいたい「神武天皇Y染色体」って(以下略
確かに現天皇を遡っていくと神武天皇、とは言わないまでもまあ6-7世紀あたりの天皇あたりまではたどりつくのだろうけれど、ではそこから下に広がっている家系はどうなるんだろう。…て書きかけたが、Y染色体ぐぐってみたら既にこれは「有識者会議」のヒアリングでも話題になっていたようだ。話を持ち出したのはほかならぬ八木氏。

2005/5/31 第6回
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2番目といたしまして、これも理由として果たして適切なものかどうかは、私はいささか自信がございませんが、遺伝学の見地からも説明が可能だということが指摘されております。私は素人ながらこのようなことを以前から申してまいりましたが、最近になりまして、生物学者の中から、あなたの言っていることは全く正しいという意見をいただくようになっております。
 すなわち、仮に神武天皇を初代といたしますと、初代の性染色体、男の場合XとYのうちのY、Y1 は男系男子でなければ継承ができません。生物学者の中に、その点を「Y染色体の刻印」というふうに表現なさっている方もおられます。
 男系男子であれば、遠縁であっても同じY1 を確実に継承しているということが、お配りをした資料の、遺伝の系図で確認ができます。確認している時間がございませんので、それは後ほどたどっていただければと存じます。
 もちろん、我々の祖先は遺伝学の知識はありません。しかしながら、農耕民族としての経験から「種」さえ確実なものであれば、血は継承できると考えていたのではないかと、このように思うわけであります。

(八木秀次高崎経済大学助教授)

うう、本当に審議会の場でこのネタが振られていたのか。
これに対する意見が一週間後。
2005/6/8 第7回
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 そういう方々のお一人が、最近も一見科学的な根拠として、天皇の「血統原理」は「神武天皇の遺伝子を今に継承している……男系男子でしか継承できない」とか、あるいは「大嘗祭を行う資格もそのような血筋を持たれる方に限られる」というようなことを述べておられます。
 しかし、私、遺伝学のことはよくわかりませんけれども、常識的に考えて、これはいかがなものかと思います。もし、神武天皇の男系男子孫に「Y染色体の刻印」が伝わっている、というようなことを皇位継承の資格要件の一つというならば、そのような男子は全国にたくさんいるはずです。既に平安の初めにできた『新撰姓氏録』は、京都と畿内の氏族の記録でありますけれども、それによりますと、神武天皇から嵯峨天皇に至るまでの歴代から分かれた男系男子孫は、これを皇統から分かれた「皇別」と申しますが、「皇別」氏族が335 もあります。また、嵯峨天皇以降、それに続く賜姓源氏とか、あるいは賜姓平氏がたくさんあります。そういう臣籍降下した各氏族の男子孫には、すべて「Y染色体の刻印」が受け継がれておるということにもなりますから、そのこと自体は大きな意味を持たないのではないかと私は思います。
 むしろ根本的に重要なことは、天皇の子孫として「皇族」の範囲内にあり、皇位継承者としての自覚を持っておられるかどうかということであります。

(所功京都産業大学教授)

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その際に男系の維持ということが強調され、果てはDNAだとかというような議論さえも持ち出されてまいっております。DNAだとかY染色体だとかという議論は、私は全く不案内でございますので、コメントする立場にございませんけれども、これまでのDNA、Y染色体をめぐる仮説がもし正しいのであれば、現在の国民男子のかなり広範な部分がそれを共有しているということになるわけです。有名な清和源氏桓武平氏に限らず皇統に出自を持つ氏族は多く、そこから分かれた家は数多くあります。Y染色体の刻印という議論をしていくと、これは国民と皇室の区別というものをあいまいにするというふうに申し上げざるを得ないわけであります。

(高森明勅拓殖大学客員教授)

高森氏って女系容認派だったのか。この議論はよく追っかけてないんで今まで知らなかった。
「区別あいまい」で何がいかんのかと思うけれども、「男系にこだわって、いったん皇籍を離れた男性を復帰させるのは余計にまずい」という意見のよう。


所氏と高森氏の発言からは、「変な意見が記録に残って審議会の権威が落ちてしまっては大変だ」という必死感が伝わってくるような…。
みんな「遺伝学はよく知りませんが」と前置きしているのがアレだが、基本的に論点にすらならないということだろう。でなけりゃヒアリングに生物学者を招いているはずで。「あなたの言っていることは全く正しい」と言ってくれた生物学者って誰だろう。
…この人? 違うかな。
藏 琢也さん
Object not found! (「Voice」掲載の文章)
なんかすごいなあ。(追記: 思い出した。この前の産経の記事でコメントしていた人だ)


おまけ。引用の引用になってしまうが、元発言は1年以上前の書き込み。
大日本正則英語学習法跡地



あの八木の「Y染色体が保持できるから男系が良い」という論理は理系の俺としては鼻で笑ってやりたい。お前染色体が何本あるかわかっていってんのか、と。23組46本ですよ?46本。男XY女XXという性染色体なんてのはそのうちの1組に過ぎない。もちろん発生過程で重要な役割を果たしているのは当然だがそれは「男」を作るために重要な働きがほとんどであって、「皇室の男」の「皇室の」の部分を担っているのは残り22本が主に決まってるだろう。

残りの22組の間で起こっている相互変異を考えれば残りをどう濃く残すか、ということの方が大事。だから皇族間の結婚は現代でもある程度の根拠を持つ。

八木もどこでききかじってきたか知らんがY染色体の役割はいまだ不明な部分が多い。しかしそれはもっと発生学的な根本(ヒトは魚にはなりえない、とか)にかかわる話であって、皇族云々の話にもってくるのはていのいい詭弁に過ぎない。



立花隆のこの→ お探しのページが見つかりませんでした | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト 話はネタとして読むのがいいんでしょう。トンデモ対トンデモの壮絶な戦いといった様相です。


何か長々と引用してしまったが、至極当たり前のことでしかないなあ。

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