雷電のチチ日記

二千円札を最後に見かけたのはいつだったろう./最近はTwitterでつぶやいてることが多いかも/はてなダイアリーから移ってきました since 2005

どちらも不十分な施設

大伯父の一人は、太平洋戦争で南洋に戦い死んだ。遺品は還ってこなかった。戦後30年経った頃に、遺骨集めを兼ねた慰霊の旅というのがあり、未亡人となった大伯母がツアーに参加して遺骨を持ち帰った。
大伯父は靖国神社に祀られているがそこには名前以外には何もない。持ち帰られた遺骨は誰のものと特定出来ないため千鳥ヶ淵墓苑に納められた。そのためこちらは名無しである。大伯母はこの季節になると「どっちに行ったらお父ちゃんおるのやろ」とぼやいていたらしい。慰霊の施設としてはどちらも不十分なものなのだなと、親戚が集まった席で話していたのを聞いてたことがある。
その大伯母もずいぶん昔に亡くなった。こうやって「どっちに行けばいい」と悩む人はだんだん減っていくのだろう。千鳥ヶ淵には今でも各地から収集された遺骨が新たに納められているが、靖国へはこれ以上の「新入り」がないことを願いたい。もちろん、慰霊の場を万歳と抗議の声が飛び交う場に変えるような行為が、適切であろうはずがない。