雷電のチチ日記

二千円札を最後に見かけたのはいつだったろう./最近はTwitterでつぶやいてることが多いかも/はてなダイアリーから移ってきました since 2005

読書感想文「タイアップの歌謡史」

「読書感想文」書きます。昔、小学校の先生から「心に浮かんだことを思った通りに書けば良い」と教えられたのでその通りにします。


題名「『タイアップの歌謡史(速水健朗著)』を読んで」

「タイアップの歌謡史」は、たいへん面白く読んだだけでなく、いろんなことを考えさせられる本だった。たとえば。

この本の帯には大きく「タイアップだからできたのだ!」とある。あまのじゃくな私は、「じゃあ、『タイアップでできなかったこと』は何だろうか」と考えてしまう。そのひとつに「日本のポピュラー音楽の輸出」があるのではないかと思った。

タイアップの対象となるテレビCMは、当たり前だが日本に住む人だけをターゲットにしているので、そのタイアップ効果はこの国から出ることはない。そしてこの国で最大の効果を上げるように作られる。国内でだけ売れまくる音楽ができあがる。

もちろん、それが悪いことかというとそうでもない。優れたマーケティングが国内の音楽需要を掘って掘って掘り起こし、海外に販路を求めずとも国内だけでじゅうぶん儲かる(「消費できる」という方がふさわしいか)ような巨大市場を音楽産業がつくりあげたんだろう。3万枚売れて「大ヒット」扱いになるような国のミュージシャンなら、国外進出を考えざるを得ないのだろうけど。…ごめんなさい別に根拠があってのことではないので的外れかも知れません。

でも、日本のテレビドラマが普通にアジアなどでも放送されるようになると、そのとき海外でもタイアップが生きてくるのかも知れない。トレンディドラマ全盛の頃、「アジア諸国でも放映されて大人気です!」みたいな報道を目にした記憶があるが、そのとき主題歌も一緒に売れたりしたんだっけ。小田和正やチャゲアスが海外でホールを満員にしたみたいなニュースは、関連してたんだろうか。国外で曲が売れたとき、国内にはどのように収益が還元されるのだろうか、ということすらよく知らないのだけれども。(あとはアレか、アニメの輸出と一緒に音楽も輸出とか)


「放送局が版権のイニシアチブを取るのを禁じる法規制」が、日本以外でタイアップが盛んでない理由として挙げられていたけれども、このあたりの事情ももっと知りたくなった。アメリカでは「映画の主題歌から生まれるヒット」は多いように思うけど、映画音楽の権利はどうなってるんだろうとか。「ミュージカル映画」といった伝統もある。
自分の若い頃で強く印象に残っているのは、80年代の「フラッシュダンス」「フットルース」といった全編プロモーションビデオのような映画。面白いことに、ここから生まれたヒット曲が日本でカバーされたときにはテレビドラマの主題歌になっている。「ホワット・ア・フィーリング」→『スチュワーデス物語』、「ヒーロー」→『スクール・ウォーズ』、「Never」→『不良少女と呼ばれて』といった具合だが、なぜか全部大映ドラマというのは理由があったんだろうか。何か構造的なものが。(というわけで日本のタイアップに戻ってきた)
アメリカイギリスフランス、あるいは非・欧米の香港台湾インドブラジルといった、自国の音楽産業が発達してそうな国のタイアップの実態など、コンパクトに知ることができたらと思った。本書の守備範囲ではないのでその点は残念だ。うーん知りたいことがいっぱいだ。


などなど、こんな私でもいろんなことを考えてしまう。もっと知りたくなってしまう。「お富さん」はパチンコ屋から生まれたヒット曲という記述を読むと、そういえばずいぶん昔に井上ひさしが「パチンコ屋で流している音楽を聴いたら次の流行歌がわかる」なんてことを書いてたな、と思い出したりもする。

タイアップの歌謡史 (新書y)

タイアップの歌謡史 (新書y)

そんな気にさせる本だった。

こんなところに発見

この前の日曜日の新聞広告。天声人語の真下とはいい場所ですね!