雷電のチチ日記

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「光源氏月見の池」って

源氏物語」の中盤、光源氏は須磨・明石に蟄居することになる。そんなわけで明石には、光源氏ゆかりの名所というものがたくさんある。いわく「光源氏月見の池」、「光源氏月見の寺」、明石の君の屋敷へ通ったという「蔦の細道」、明石の君の父、明石の入道の屋敷跡。
むろん、源氏物語はフィクションなのでそんなものが実在するはずはない。これらはいずれも後世に創作されたスポット。
江戸時代の初期(17世紀)、明石の藩主だった殿様のしわざと言われている。この人は大の文学好き、なかでも源氏物語が大好きであったという。自分の任地が名作の舞台になっていたことがうれしくてたまらず、あちこちに「この辺で光源氏が月見をしたんだろう」と言ってはお寺に池を造らせ、「この道はなかなか雰囲気がある」と言っては明石の君のもとへ通った道ということにして、光源氏の気分を大いに楽しんだという。なかなかロマンチックな殿様である。世が世なれば大々的に観光キャンペーンでもやらかしていただろう。今の明石市は殿様ほどの才気はなく、源氏物語千年紀を記念して「観光大使・光源氏/明石の君」を選んだ程度である。*1
平安期に光源氏が、江戸期には殿様が、明治期には文豪が愛でた明石の地でのお月見、現在は明石の浦に巨大なつり橋がかかり、趣もまた昔とは違っている。


*1:http://www.city.akashi.hyogo.jp/seisaku/news/080712.html