雷電のチチ日記

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イカナゴ「今年も」不漁話

大阪湾・播磨灘でのイカナゴ漁が昨日解禁になった。最近は不漁続きで、今年も例年以上の不漁が予測されている。


かごいっぱい春の味 イカナゴの新子漁解禁 兵庫・明石:朝日新聞デジタル

ところで「いかなごの釘煮」は当地の伝統とされているが、歴史は浅いものだという。以下は2007年初出の神戸新聞記事。


神戸新聞 読者クラブ:歴史は浅い浜の風物詩 イカナゴのくぎ煮 − 明石を食べる 郷土料理を訪ねて

  • 明石で釘煮が普及しだしたのは約20年前(2007年時点)。
  • 昔はシンコの食べ方は釜揚げだけで、むしろ1年過ぎた成魚が食べられていた。
  • 以前は餌として獲るのが主で売値も安かった。そこで漁師らが目を付けたのがくぎ煮で、消費振興による収益アップを狙った。
  • 漁協は料理講師を育成、コープなどともタイアップして料理教室を各地で開き、地道に普及に努め、
  • 阪神・淡路大震災の後、明石や神戸の被災者らが支援へのお礼として全国にくぎ煮を送ったことが、普及に弾みをつけた。漁価は餌のころの約五倍に高騰。漁師たちの狙いは的中した。


あーそうだよそうだった。私が子供の頃、シンコ(幼イカナゴ)の釜揚げがよく食卓に上がっていて、釘煮よりも圧倒的にメジャーだった。シンコの釜揚げはちょうどちりめんじゃこ(シラス)釜揚げの大振りなものを想像されるとよい。ちょっと生臭いんで苦手だったなあ。
食卓には釘煮ぽいのも出てきたが、うちのはすごく柔らかく炊いてあり「釘煮風味の釜揚げ」みたいなものだった。


当地ではコープこうべだけではなく今や一般のスーパーでも、「でかい鍋」「しょうゆ」「みりん」「ざらめ」「料理酒」などを集めた「くぎ煮コーナー」を作っている。郵便局やクロネコなどの配送業者は「発送はぜひこちらで!」とのぼりを立てて客の呼び込みをしている。「発送専用容器」まで売っている。


いってみればこれも「作られた伝統」、恵方巻みたいなものだ。
大阪湾播磨灘イカナゴ(シンコ)の不漁がデフォ状態になっていくのは90年代後半からで、これはちょうど釘煮が普及して需要が伸びていた時期と一致する。地元では「不漁になるのは明石海峡大橋の橋桁ができて海峡の潮目が変わったから」説も語られる。上の記事には、イカナゴ漁が他の魚種に影響を与えるのを心配する声も載っている。いろいろ悩ましい話である。

当地での自家消費に留まるなら、資源への負荷も今ほどきつくはないと思うんですが。