雷電のチチ日記

二千円札を最後に見かけたのはいつだったろう./最近はTwitterでつぶやいてることが多いかも/はてなダイアリーから移ってきました since 2005

議会と政治家の成熟度

まもなく退陣するブレア首相がロイター通信主催の昼食会で「最近のメディアは、つまり君たちのことだが、残忍な野獣(feral beast)だ」と過激な言葉で批判したのは出典があったのだという話。1920年代に首相をつとめたボールドウィンのスピーチが下敷きで、さらにボールドウィンのスピーチはキップリング(ノーベル文学賞作家)のスピーチの引用であり、ブレアの発言は引用に引用を重ねたものなのだそうだ。(「[JMM432F]「Feral Beast」オランダ・ハーグより」(春具)より。以下の引用も同様)

 わたくしはどこの国にいても議会中継をテレビで観るのが好きで(へんな趣味だ、と家族は言いますが)、とくにイギリスとフランスの国会中継は観ていて飽きない。イギリス議会における与党と野党の応酬は、相手をバカだアホだと罵倒しながらも、掛詞あり、比喩あり、引用あり、警句あり、つまり与党も野党も平安時代の恋歌の応酬みたいに言葉で遊んでいる。ですから罵詈雑言も聞いていて優雅。そして、あっ、これはあの小説の一節だ、みたいな発見をするおもしろさがあるのであります。
 もっとも故事を散りばめて洒落てみても、相手がわかってくれなければ、それは「ウマの耳に念仏」である。ブレア氏のスピーチがあれほど過激だったのに報道の反応が穏やかだったのは、ジャーナリストたちもこれらの故事について聞き知っていたからということではなかったか。
 聴き手の教養度を計算して攻撃をかける。このことは、ときとして相手がきょとんとするというリスクはありましょうが、コミュニケーションの手法としてかなりハイレベルな技術ではないか。ブレア氏は、最後のリベンジをなかなか上等な手法で攻めたな、とわたくしは思うのであります。

彼我の教養の違いか歴史の違いか、うーむ。彼の国の首相の知性に感じ入り、翻って我が国の貧(ry  英国議会で「強行採決」とかはあるのだろうか。最近の日本の国会ではこの言葉ばかり耳にするけれども。