ワールドカップを知らなかった頃
その昔、小学館の学習百科事典全12巻というのがあった。ちょうど私が小学校低学年の時に刊行が始まり、毎月1冊ずつ家に届けられていた。本を読むのが好きだった私は、届けられるとまるで続き物の物語を読むように隅から隅まで読もうとしていたものだ。もちろん知識も少ないので全部わかるはずはないが、「地球と宇宙」の美しい画像や「物質とエネルギー」の実験のページ、「美術と音楽」の絵画など、楽しく知識を吸収していた(のだろう。身についたかどうかはよくわからない)。
そんな中で、どうしても理解できないものがあって、そのひとつが「サッカーのワールドカップ」であった。*1
事典ではコラム的な扱いで、「オリンピックよりも人気があり、テレビでの大会観戦者数は世界一である」などと書かれていた。オリンピックよりも人気があるだって? 当時の日本の新聞では、オリンピック(当時はモントリオール五輪か)は大々的に報じるけれども、W杯なんてどこを探しても見あたらない。「日本代表チームはまだ出場したことがない」と書かれていた大会のことを、ペレとベッケンバウアーと釜本の名前程度しか知らない小学2年だか3年だかが理解できるはずがない。結局、1986年のマラドーナの大会までワールドカップが何かは分からなかった。
今ではワールドカップがどういう大会なのか、大勢の日本人が知っている。小学2年生で野球好きの私の子供まで、「カメルーンのエトーはすごいな」なんて言っている。まさに隔世の感である。
もうすぐお祭りが始まる。もう日本もすっかり巻き込まれている。代表チームがぱっとしなくてもよいではないか。素直に楽しみたいと思う。
*1:スポーツではもうひとつ分からないものがあった。「アメリカンフットボールのプロリーグ」である