雷電のチチ日記

二千円札を最後に見かけたのはいつだったろう./最近はTwitterでつぶやいてることが多いかも/はてなダイアリーから移ってきました since 2005

テーブルトーク 大阪大教授 菊池誠さん(48)

科学と論理 はじけたトークで


 専門は難しげな統計物理学だが、ことあるごとにニセ科学を指弾する一方で、週末は演奏に明け暮れる熱き「ロックオヤジ」が、その実体だ。
 5年前から大阪のカフェで続けるイベント「かわいい物理」は、ライブ感覚のはじけたトークが ”文系女子” にも人気。「文学やお笑いと同じ文化の一つとして、科学も楽しんでほしいんですよね」。ただ、重点は「面白さ」よりも「その背後にある論理」に置くようにしている。
 啓蒙する気はない。でも、これはイイ、あれはダメと割り切る根拠が科学だという世の認識をじわっと変えたいと願っている。科学は何にでも答えを出せるんだという誤解が、「科学的」な言説に付加価値を与え、ニセ科学をのさばらせると痛感するからだ。
 「理論の裏付けがある『ファジー』と、そうでない『マイナスイオン』『ゲルマニウム』は、受け止める側には同じ『迷信』。真の科学にとっては看過できないが、人間の果てしない想像、創造が次にどんなトンデモを生み出すか予測できないから、我々は後手に回るんですよねえ」
 科学とは、世のあれこれをなるべく少ない法則で説明しようと試みる作業。森羅万象を記述できる唯一の根本法則に遡れるほど科学が進歩しても、「なぜそうなのか」という問いは最後まで残る。「その問いに答えるのは科学じゃない。わからないことは、わからない。それが現実世界」
 論理の積み重ねや合理性を理屈っぽいと遠ざけ、結論だけに飛びつく風潮に危険を感じている。「結論には、その途中の筋道がある。生きていく上で何を重点に置くのか、その判断を助けるのが科学なんです」
(織井優佳)

(朝日新聞12月28日大阪夕刊)
まんがのぎっしり詰まった本棚の前でポーズをとる菊池先生がおちゃめだ。