雷電のチチ日記

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点灯しない?LED(高校入試問題の問題)

今年行われた兵庫県公立高校入試の理科の問題で、「設問の前提条件に誤りがあるのでは」との指摘があったのでいろいろ調べてみたという記事が本日の朝日地方版に掲載されていた。ネットには上がっていないようなので(有料版の方にあるのかな?)ちょっと要点をかいつまんでみる。(追記)→後日ネットにも上がりました。この記事の末尾参照

以下あらすじ

問題は「亜鉛と銅の板を酸性の水溶液につけて電気を起こし、LEDを点灯させた」という前提なのだが、「亜鉛と銅の起電力は1.1V。LEDを点灯させるには1.8V以上が必要だから、つかないのではないか?」という指摘が神大の先生からあった、ということで記者はあちこち聞いて回る。

  • LEDを製造する大手メーカー
    • 「点灯するかしないか、非常に微妙です」市販製品では3V以上の電圧が必要。リモコン用の赤外LEDなら1.2Vで点灯する他社製品がある。確かに微妙。「でも赤外線ですから目には見えませんけどね」
  • 別の大手電機メーカーの研究者
    • 「1.1Vでは目に見える形で発光しない」最低1.5Vは必要。
  • では問題を作った県教委に取材。この装置で本当に点灯するかどうか確認した?
    • 「実験したと聞いています。ついたりつかなかったりしたらしいのですが、実験の誤差の範囲かと」どのメーカーのLEDを使った?「お教えするのは不適切だと思います」。「世界で最も低い0.66Vで発光させることに成功した、という東芝の論文も見つけた。理論上は点灯するので問題ないと判断したと聞いている」
  • じゃあその東芝広報室に聞いてみよう
    • 「可視光という条件であれば発光しません」じゃあこの論文は?「多孔質シリコンという特殊な物質を用いた、あくまで実験場の話。この装置では普通のLEDは点灯しません」研究の実用化はされていない。
  • で、どうなの?最初に指摘を寄せた神大の西野友年准教授は
    • 「もし点灯するかどうか悩んだ中学生がいたら、ノーベル賞ものかも」合否に影響が出たとは考えにくいようだ。

というわけで、結局「どうでもいい」という結果だったようだが、えらくあちこちに取材していろんな事実が分かってたいへん面白い記事であった。

前段がある

ちなみにこの記事を書いた記者は5日前にも同じ試験の出題ミスを指摘する記事を書いている。
朝日新聞デジタル:高校入試「理科に別の正解」 兵庫県教委、出題ミス否定 - 教育
こちらの記事は、経緯をひとしきり説明した後で「問題ない」という県教委に対してかなりきつい言葉で締めくくっている。なんか今日の記事はその続編といった感じだ。

中学生には事実上解けない問題を県教委は問うたことになり、明らかな出題ミスと言える。潔く認めて経緯を公表し、適切な措置を取るよう求めたい。

高校教育課によると、「0.01J(ジュール)」という解答以外に、塾通いなどで「学習が進んだ子供」(同課担当者)であれば、「0.035J」と答えることは「想定していた」という。それが事実ならば、なぜ、不適切な問題文を見直さず、放置したのだろうか。

この問題の真の正解は、「0.035J」である。それは県教委も認めている。「習った覚えはないのに、どう解けば……」と悩んだ受験生もいただろう。「中学校で学ばない部分は度外視して、答えてもらえばよかった」というのは詭弁(きべん)だ。

兵庫県の公立校入試は昨日合格発表だった。私の姪も無事合格した(おめでとう)。この問題が気になったかどうかは、わからない。気になったらノーベル賞だそうだが(笑)

(追記)ネットでも読める

朝日新聞デジタルにも記事が上がりました。
朝日新聞デジタル:これで発光する?兵庫県公立高入試、出題内容にまた疑問 - 教育